「保育園落ちた日本死ね!!!」騒動に学ぶ 「小事を大事にしてしまう」世論の読み誤りの怖さ

2016年2月29日、衆院予算委員会で、「保育園落ちた日本死ね!!!」というタイトルの匿名ブログについて激論が交わされました。
民主党の山尾志桜里議員がこの匿名ブログを紹介して待機児童問題の深刻さを訴えましたが、これに対する安倍首相や与党議員の言動が世間の反感を買ったことにより、2016年3月9日時点で27,000を超えるネット署名が集まり、国会議事堂前で抗議行動が起きる事態にまで発展したのです。
なぜ、たった1つの匿名ブログがこれほどの影響を与えたのでしょうか?

「保育園落ちた日本死ね!!!」ブログの趣旨

まず、「保育園落ちた日本死ね!!!」というタイトルのブログ記事について簡単に説明しておきましょう。この記事は「株式会社はてな」が提供する「はてな匿名ダイアリー」という匿名ブログに、2016年2月15日に投稿されたものです。
当然投稿者の名前や立場は伏せられていますが、内容からは「子供が保育園に入園できなかったため、復職できない母親」が投稿したものであることが読み取れます。
ブログの内容としては、
・一億総活躍社会というスローガンを掲げているにもかかわらず、活躍したい女性が活躍するために必要な保育施設の不足を解決しようとしない日本(政府及び行政)への強い不満
・保育施設が増やせないのならせめて児童手当を増やしてほしいという要望
などが切実に語られており、同じ悩みを持つ子育て世代に強く響いたものと思われます。

また、このブログは「日本死ね」「何が少子化だよクソ」といった、ストレートな怒りをぶちまけた表現でつづられています。これが良くも悪くもマスコミや世間の注目を集める上で大きな役割を果たしました。

「匿名なので事実を確認しようがない」と軽く受け流すはずが…

このブログ記事は、投稿直後からさまざまなメディアで取り上げられました。しかし、政府を巻き込むほどの騒動となったきっかけは、衆院予算委員会での山尾議員の発言に対し、安倍首相が「実際、本当に起こっているか確認しようがない」と答えたことです。

首相の発言の趣旨は「本当にそのような人物が実在するのかどうか、匿名なので事実を確認しようがない」というものですが、聞きようによっては「待機児童問題の実態がそんなに深刻なのかどうかわからない」という風にも聞こえます。

実際、このあと安倍首相は「待機児童がたくさんおられることも事実」とした上で具体的な対策の話をしているのですが、上記の発言のインパクトが強く、ほとんどのマスコミは「本当かどうか」の部分だけを強調して、安倍首相がいかにも冷たく突き放したかのようにミスリードして報じました。

また、与党議員から飛ばされた「誰が書いたんだよ」「本人を出せ」「中身のある議論をしろ」といったヤジも火に油を注ぐ形となりました。おそらく安倍首相を援護するためのヤジでしょうが、安倍首相の「本当かどうか」とセットで報道されたことも世論を強く刺激したようです。

ヤジを飛ばした自民党の平沢勝栄議員はテレビ番組に出演し、ヤジそのものについては謝罪したものの、「日本死ね、という言葉には問題がある。日本語として汚い。本当に女性が書いた文章ですかね?」などと発言しました。また「ブログ記事は政府を批判したい誰かが捏造したものでは?」という疑惑を暗に示唆しました。

ネット署名、ツイッターの拡散

こうした騒動に刺激を受けた人々のあいだで保育制度の充実を求める署名運動が広がり、3月9日午前10時半までに27,682人分(朝日新聞による)の署名が集まりました。また、ツイッター上では「#保育園落ちたの私だ」というハッシュタグが拡散されました。集まった署名は山尾議員から塩崎厚労相に直接手渡され、山尾議員は「保育士の給与引上げ法案を今国会に提出する」と明言しました。
こうした事態を重く見た政府・与党は、一転して待機児童問題への対応を強調し、政権批判が広がらないよう必死の火消しを余儀なくされたのです。

おわりに

この騒動から学ぶべきことは、ちょっとした軽はずみな言動がピックアップされ、いかに世間を苛立たせ、大きな反感を買ってしまうリスクにつながるかという点になります。

もし、安倍首相が最初の発言で「匿名ブログの存在や内容が事実かどうか」などという問題の本質に関係ないことから話を始めず、「問題の深刻さは承知している」と正面から受け止めていれば良かったのかもしれません。そして、議員が軽はずみなヤジを飛ばさなければ騒動などには発展せず、「今後真摯に対応する」という結論で済んだ話かもしれないのです。

<参考URL>
JCASTテレビウォッチ 「「保育園落ちた日本死ね!!!」投稿は私です!30代前半。来月に息子1歳」
http://www.j-cast.com/tv/2016/02/22259165.html
ハフィントンポスト  「保育園落ちた日本死ね」ブログに安倍首相「本当か確認しようがない」、国会では「誰が書いたんだよ」などのヤジ
http://www.huffingtonpost.jp/2016/02/29/zero-waiting-list-for-nursery-schools_n_9352520.html?utm_hp_ref=japan
保育園落ちた日本死ね!!!  ブログ原文
http://anond.hatelabo.jp/20160215171759#tb
ツイッター 「保育園落ちた」アカウント  フォロワー数確認のため。
https://twitter.com/hoikuenochita?lang=ja
PR TIMES 「保育園落ちた日本死ね」ブログ~働く主婦はどう感じたか~心から共感する20.3%
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000114.000003176.html
「保育園落ちた」ブロガーに官邸や安倍応援団が総攻撃  「ブログが山尾志桜里議員の仕込みだった」というくだりの文脈の参考に
https://yuzawaheiwa.blogspot.jp/2016/03/blog-post_28.html
LITERA 平沢勝栄議員のヤジ及び揶揄についてのくだりを参考に。
http://lite-ra.com/2016/03/post-2051.html
LFマガジン 「保育園落ちた日本死ね」待機児童問題の時系列まとめ。
http://life-hacking.net/「保育園落ちた日本死ね」待機児童問題の時系列/
株式会社はてな 公式サイト
http://hatenacorp.jp/
朝日新聞デジタル 「保育園落ちた」きっかけに2万7千署名 制度充実求め
http://www.asahi.com/articles/ASJ395GRMJ39UTFL006.html
朝日新聞デジタル 小規模保育所の定員拡大へ 「保育園落ちた」で政府検討
http://www.asahi.com/articles/ASJ3R5RH8J3RUTFL01G.html

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