真実を伝えない報道で炎上!? 「インパクトとわかりやすさ」を追求する報道の行動原理

2015年9月、関東・東北豪雨によって茨城県常総市で鬼怒川の堤防が決壊するという大規模災害が発生したことは、多くの人にとってまだ記憶に新しいのではないでしょうか。
この災害への対応のため、常総市の職員は連日長時間残業を余儀なくされ、その結果残業手当を含む市職員の給与総額は膨大な額に上りました。
毎日新聞がこの事実を報道した結果、ある市議会議員のブログが炎上してしまいました。
なぜ、そのようなことが起こったのか、流れを追いつつ問題となった点を見ていきましょう。

世間が注目した常総市の市職員給与問題

この事例を考察するためには、炎上騒動の背景にあった事情を理解しておく必要があります。
鬼怒川の堤防決壊災害が発生して以降、常総市の市職員は被災者の対応などに忙殺され、この月の市職員の平均残業時間は139時間、最長で342時間に達したとしています。これは市議会の一般質問で、ある議員の「災害時の給与支給」に関する質問に対して市側が答弁したことで明らかになりました。

139時間といえば、仮に1ヵ月を22営業日とした場合、1日あたり約6.3時間も残業したことになります。つまり、1日の勤務時間を7時間とした場合、平均的な市職員でも通常の月のおよそ2倍近く働いたということです。
342時間残業のケースでは、試算してみたところ、この職員は1ヵ月のあいだ、最低限の睡眠時間以外はほとんど働いていた計算になります。相当苛酷な労働状況であったことは否定できません。
そして、この月の市職員の給与支給額は、残業手当を含めると膨大なものになり、中には100万円を超えた職員も十数人いたとのことです。

2015年12月6日の毎日新聞の記事では、上記のような事実を記事内で取り上げるとともに、「給与100万円超」という答弁があったとき、傍聴席の市民から大きなため息が出たと報じています。

市議会議員のブログが炎上

同記事中では常総市議会議員である遠藤章江氏の一般質問を取り上げ、
「(市職員は残業手当を)もらう権利はあるだろうが、ボランティアが無償で働いているなか、市職員が多額の給与をもらうことに市民から疑問の声が上がっている」「給与が高額にならないよう、災害時の特別給与体系の創設を求める」と発言したとしています。

この報道により、遠藤議員が個人で開設しているブログには「災害時にはタダ働きしろということですか?」「何か勝手にボランティアが常総市市役所の職員さんに残業代が支払われたことに不満を持っているかの如き話をされており非常に不愉快に思います」「残業代不払いという、法律違反を主張する議員がいたとはビックリです」といった抗議が集中し、ブログは炎上しました。

しかし、遠藤議員はこの毎日新聞の報道に対して、自分のブログで、
「言葉尻だけを抜き出し、都合のよい具合に記事をまとめ上げ、質問の内容を正確に伝えていない新聞の書き方は誠に不快」であると反論しています。

また、2015年12月11日のブログでは毎日新聞に対して、
「給与が高額にならないように災害時の特別給与体系の創設を求めたわけではない」「自分は長時間残業を行う職員らの健康管理や、職員の子供が一人で家に取り残されるなどの犠牲を防ぐことが大切と考えている」「市職員の残業代の増大によって社会保険料が著しく高額になり、結果的に市職員の負担が重くなるのを避けるために災害時の特別給与体系創設を求めたものである」といった内容の抗議文を送ったことを報告しています。

マスコミは「インパクトとわかりやすいストーリー」を好む

事例からは、報道記事は「状況を象徴する、インパクトが強く読者の興味を引く見出し」をつけようとする傾向が見られます。

このケースでは、毎日新聞が記事をまとめる上で「常総市職員の給与支給額が膨大な額になった」「これに対し、議員が災害時の特別給与体系の創設を求めた」「市職員の給料が災害時などに膨大な額にならないよう規制を求めたものだろう」
という、憶測を含めた「わかりやすいストーリー」にしてしまったものと思われます。その結果、議員の発言の意図が読者に伝わらず、意図とは正反対の発言をしたかのようなミスリードを生んでしまったのかもしれません。

おわりに

このケースでは、たとえ正当な発言であっても「マスコミへの取り上げられ方によっては大きな炎上被害の犠牲者になり得るリスクがある」ことがあるとわかりました。企業トップや組織のキーマンが重大な問題について発言するときは、どのような状況下・どのような言動が誤解を招きやすいのかを意識し、誤解やミスリードが生じる余地がないまでに姿勢を明確にし、言葉尻を取られないよう、シンプルにメッセージを発するべきなのかもしれません。

<参考URL>
毎日新聞 関東・東北豪雨常総市職員、残業で給与100万円超も
http://mainichi.jp/articles/20151206/k00/00e/010/139000c
キャリコネニュース 水害対応で3週間休みなし!常総市職員の100万超の残業代で議論 ネットでは「当然支払うべき」が多数
https://news.careerconnection.jp/?p=18979
JCASTニュース 残業代込みの給与「100万円超」が続出 水害の対応、常総市のケース巡り論議
http://www.j-cast.com/2015/12/07252541.html
毎日新聞 常総市職員 残業300時間超も 鬼怒川決壊対応で
http://mainichi.jp/articles/20160122/k00/00m/040/026000c
鬼怒川水害対応で常総市職員ら300時間超の残業も→結果、給与が高額過ぎたと市議が「改善要求」
http://buzzap.jp/news/20151207-endo-fumie/
常総ルネサンスへの道 遠藤ふみえ
http://blog.goo.ne.jp/fumie-endo

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